【漫画】『pet』三宅乱丈

pet

私は、記憶がテーマとなる物語が好きです。

なぜ好きなのか?

自分自身のアイデンティティを形成しているものだからかと。

今の私を私たらしめているのは、記憶があるからで、

この記憶を改竄された場合、

私は私なのだろうか?

と考えるとワクワクしますね(笑)。

ノーランの『インセプション』もそんな感じ。

『pet』はそんな記憶をテーマとしたSFです。

基本情報

作者:三宅乱丈

発表期間:2003年

巻数:全5巻

感情と記憶と背景

『pet』をはじめて読んだときに、

面白いと感じたのは、心象風景です。

登場人物の感情と背景

よく、小説とか、漫画とか、

主人公の気持ちが暗いときには雨が降ったり、

問題が解決したりすると、

いきなり空が晴れ上がる、とかありますよね。

こういった描写って、物語特有で、

風景が登場人物の感情を表しているといえます

けれども、現実は、

例えば、告白してOKをもらった日は雨だったり、

人生で最悪の日が、雲ひとつない晴れだったりしても、

まったくおかしくはない。

現実世界では、感情と風景は別々の事象なんです。

『pet』の場合

上記を前知識として持っておくと、

『pet』はかなり興味深い。

例えば、登場人物の健治の記憶。

健治の「ヤマ」は、横田と一緒に海に潜って、

桂木からの危険な仕事を行なっている最中に、

横田から二人で飲み屋をやらないかと言われたとき。

一般的な物語なら、このときの健治の感情を表す方法は、

曇っていた空が晴れるとか、光が差し込むとか

現実で起こりうる範囲の自然描写に頼ると思われます

しかしながらこの場面での自然描写は、

「ハイビスカスが空から舞いおちる」という、

超自然的方法で表現される

感情と深く結びついた記憶が、

天候といった自然現象を変更させるだけでなく、

物理法則をも変えています。

この作品が他の作品と異なっている点は、

感情が記憶と深く結びつくだけでなく、

感情が記憶の世界を、より自由に、

作り上げているという点ですね。

圧倒的なストーリーテリング

はじめから最後まで、

寝食を忘れて、貪るように読んでしまう、

圧倒的なストーリーテリングです。

物語が破綻することなく、伏線を丁寧に回収し、

登場人物にこれでもかと感情移入させ、

全5巻を読み終わってもなお、

さらなる続きを待望せざるをえない本作は、

傑作としか言いようがありません。

物語の序盤、あんなに嫌いだった桂木を

最後には、ここまで好きにさせる作者の力量に脱帽。

登場人物の描写のうまさとは、その人物の美醜とは関係なく、

その人物のことが好きになるような描き方にあることに、

改めて気付かされました。

まとめ

『pet』は紛れもない傑作です。

この作品の続きである『fish』楽しみです。

ぜひ、こちらもどうぞ!

マンガ描き始めました。

私のプロフィール

京都市の女性税理士です。

税理士になるまでの苦労が綴ってあります。

税理士試験はうまくいかないことばかりで、

何度も自暴自棄になっています。

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